「時代のしるし」

創世記8章1~19節
マタイによる福音書 16章2~3節

説教 北 博 兄

 聖書に1年以上も外出できなかった人の話が書かれている。それはノアである。創世記6章9節「その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった」。「神に従う人」は直訳すれば「正しい人」、「無垢な人」は他では「全き人」とも訳されており、「心だけではない全体としての人間の健全性」である。アブラハム(創17:1)とヨブ(ヨブ1:1)もこの言葉で称賛されている。このノアに、ある日神は巨大な箱舟を作るよう命じ、その構造について細かく指示する。ノアはただ黙々と、神に命じられた通りに造船作業を続け、すべての動物達が箱舟に入った後、「主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた」(7章16節)。神がノアに外に出るよう命じたのは、最初の日付から数えて実に1年10日後である。ノア達は、どれだけ不安で大変だったことか。洪水後の世界は、それ以前とは様変わりしていた。しかし、変わらないばかりか新たな意味づけをされたことがある。人間の「神の似姿」性(1章27節)は、9章6節ではそれを根拠として、殺人の禁止が宣言される。コロナ後のIT社会においても、人間の尊厳はより一層守られなければならない。
  マタイによる福音書16章3節で、イエスは空模様から天候を判断することにたとえて「時代のしるし」を見るように言っている。今、時代は大きく変わろうとしている。私達もそれぞれ、多かれ少なかれ変わらざるを得ないであろう。しかし、急速に変化する社会に追いつこうとして、慌てて流れに乗るだけでなく、変えてはならないもの、守るべきものをも、しっかりと見分ける必要がある。聖書をよく読み、よく祈り、しっかりと時代のしるしを注視していきたい。

2020年5月24日 | カテゴリー : 主日礼拝説教 | 投稿者 : サイト管理者