「民族の苦闘の中で-カンボジアの教会」

詩編 77編 2~16節

説教 原 誠 牧師

 今朝はカンボジアの教会について語る。カンボジアに関する一般的な認識はポルポト時代に大虐殺が行われたこと、多くの人々が難民となった、アンコール・ワットがある国というあたりだろうか。ポルポト時代には人口700~800万人の時代に100万人から200万人という人びとが殺され、そのなかには教師や医者、公務員、資本家、芸術家、宗教関係者らが含まれていた。このカンボジアにもほんのわずかだがキリスト者がいる。資料によればプロテスタントの教会の信徒の数が8万人という。
 18年前に訪れたとき、100を超えるキリスト教の団体がカンボジアで活動をしていた。現在の政治体制は宗教に対しては自由だ。
 プノンペンにあるカンボジア聖書協会で、総主事のヨス・エム・シタン夫人(Mrs. Yos Em Sithan)に会った。彼女は「以前に出版されていたクメール語の聖書は1954年にChristian and Missionary Alliance、CMA、クリスチャン・アンド・ミッショナリー・アライアンスによるものであった。その後(ポルポトによる内戦が終わってから)1998年にカトリックとの共同訳が完成して、現在、毎年10000部が出版され、国内のすべての教会がこれを用いている。わたしは1973年に非合法の家の教会で受洗して以来、厳しい政治情勢のもとで過ごした。89年以後、状況が変わって政府から公認されるようになったが1990年にはプノンペンにはただひとつの教会があったにすぎない」と語ってくれた。
 つまり一応の政治的安定が始まり海外からの援助によって国を建て直そうとしたとき、欧米のキリスト教伝道団体とキリスト教のNGOの活動が開始され、その大部分の活動は極めて保守的なキリスト教によるものであり、その活動はいわば「ライス・クリスチャン」あるいは「サンタクロース・プロジェクト」のようなものであるということである。
 今回、私がコンタクトを取ったのはこれらの教会ではなくカンボジア・クリスチャン・カウンセル(Kampuchea Christian Council、KCC)であった。この教会組織は35の伝道所をもつ自立したほんの15の教会で組織された協議会である。なぜこの協議会とコンタクトを取ったのかといえば、このKCCがカンボジアで唯一CCAに加盟しているからであり、またこの教会の群れが他の教会とは異なり、海外の教会、伝道団体の支援、援助によって成立して活動しているのではなく、カンボジア人によるカンボジア人のための教会を設立しようとしているからである。この教会は、子どもや学生へのミニストリーを重点的に行なって、自分たちの教会は自分たちの足で立つという自立の姿勢が明確である。このKCCのリーダーのイン・チュン(Eang Chhun)牧師はかつては医学部の学生であったが牧師になった。彼の案内で86歳のシェン・アン(Sieng Ang)牧師に会った。彼はポルポト時代にベトナムに亡命していた。突然の訪問であったがとても歓迎してくれ、手を取り合ってともに祈りの時をもった。
 このような困難ななかで、聖書は「あなたは奇跡を行われる神/諸国の民の中に御力を示されました」と告げる。これが祈りである。