ローマの信徒への手紙12章9~18節
説教 原 誠 牧師
教会は奇跡を起こす。神の言葉は、何者によっても制約されない。それをわたしはラオスのヴィエンチャンの教会で見た。
ベトナム戦争後に成立したラオス人民民主共和国は共産党一党独裁の国で、人口が約700万人で国民の60パーセントは上座部仏教の信徒だ。少数山岳民族のなかにキリスト教徒がいたが、多くはベトナム戦争時代にアメリカ軍の傭兵となって軍事的に利用された。戦後、共産党政権は仏教を含めて宗教活動を禁止し、共産主義を嫌うキリスト教徒を含む多くの人びとが共産主義を嫌って国外に脱出した。17人いた牧師もそうだ。一人残った牧師は刑務所に入れられた。
ヴィエンチャンの教会のカンペーン牧師は、一人残って刑務所に入れられた牧師の甥である。礼拝ではタイ聖書協会がラオ語の聖書を出版したものを贈られて朗読し、讃美歌はOHPを用いてラオ語でラオのメロディで歌われる。わたしが「教会の奇跡」というのは、驚くべきことにこの状況のなかで、毎年5000人が受洗してクリスチャンになっている、ということなのだ。一度、壊滅した教会が再生している。
教会のなかでしか活動(礼拝)を認められない状況のなかで、信徒たちは日々の暮らしの只中で、地域の知人・友人に伝道し、教会に連れてくる。信徒が地域のリーダーとなっている。その礼拝は聖霊に満ちたものであった。わたしが言葉を交わした一人の信徒は ラオス国立大学の教授で共産党員であって教会の信徒リーダーとなっていた。
カンペーン牧師の話によると、最貧国のひとつであるラオスでも家庭内暴力、飲酒、DVがあるものの仏教寺院は人びとの日々の暮らしの現実に対してメッセージをもたない、人びとが福音を求めていると。だから教会は「慰め」「癒し」「希望」の説教を語るのだと。そして教会の重要なプログラムは礼拝後の「仲間の連帯」(フレンドシップ・ランチョン)だという。 社会でのキリスト教活動が公認されていないなかでアメリカのキリスト教団体はラオス人の牧師をダミーで派遣し、NGOの活動として子ども、母親、保健衛生などの活動を展開している。カンペーン牧師は「信徒が信徒を生むのだ」という。 わたしが冗談ぽく「羊飼いは羊を生めない、羊が羊を生む」というと、その通りだといった。一度、壊滅状況に置かれたラオスの教会はよみがえった。
ラオスにおいて教育レベル、経済状況、政治の制度は厳然としてあるものの、それらを超えて福音は生きて、その出来事が実現していた。2度目の2018年には、以前にあった会堂は火事で消失したが以前にも増して大きな新しい会堂が完成しており、さらに新しい教会の建設がすすめられているという。 福音の力は、教会に奇跡を生み出す。ここにわれわれの信仰がある。