甲状腺がん多発状況をうけて

甲状腺がんシート表(福島県)

pdfはこちら→甲状腺がんシート表(福島県)

■甲状腺がん多発
12月27日(火)、第25回福島県「県民健康調査」検討委員会 が福島市内で開催されました。2014年4月2日から2016年3月31日の2年間に甲状腺超音波検査が実施され、必要な場合、詳細な二次検査なども行われた結果、68名の甲状腺がん、又は悪性疑いの子どもたちが確認されました。2011年からの先行検査との合計では183名という甲状腺がん、又は悪性疑いの子どもたちが確認されています。2巡目である本格検査における、68名の前回結果の内訳を見ると、A判定(A1:31人、A2:31人)が62名、B判定が5名、未受診者(今回初受診者)が1名でした。二次(精密)検査が必要ない、とされているA判定だった子どもたち62名が、約2年後の検査で甲状腺がん、又は悪性疑いと確認された事実は大変重いです。

当日資料はこちら→第25回「県民健康調査」検討委員会配布資料

■民間基金による甲状腺がん患者への療養費給付開始
同日3・11甲状腺がん子ども基金(代表理事:崎山比早子さん)が福島市内で記者会見を行い、甲状腺がんと診断された35人(事故当時6才~10代)に対し療養費の給付を開始したと発表されました。「3・11甲状腺がん子ども基金」は東京電力福島第一原子力発電所事故以降、甲状腺がんや甲状腺疾患、その他、被ばく影響によると思われる病気に苦しむ子どもなどへの支援のため設立された民間基金です。35人の内訳は、福島県26人、神奈川県3人、宮城県、群馬県、千葉県、埼玉県、長野県、新潟県がそれぞれ1人です。

①福島県外からの申請者については自覚症状があってから検査を受けられたご様子からか、甲状腺の全摘出手術、又、甲状腺外転移が多いことなど、より症状が重い深刻なケースが報告されました。
②福島県の検査ではわからなかったものの、自主的に受けた検査で甲状腺がんだと判明した方が複数いると報告されました。

これまで、臨床現場においても小児甲状腺がんについてはわからなかったことが多かったようですが、以上からは、子どもの甲状腺がんは、大人より進行がアグレッシブである可能性が極めて高いこと、また、「予後がいい」と言われる甲状腺がんであっても、発見が遅れると甲状腺の全摘や、転移、再発のリスクがより高まることが明確になってきました。

宮城県内においては丸森町だけが公的に甲状腺検査を実施しています。2015年7月から2016年4月にかけ実施された2回目検査では、事故当時18才以下だった1564人の希望者が検査を受診し、そのうちの2人が甲状腺がん、又は悪性疑いと確認されています。
丸森町 甲状腺検査(第2回目)の結果について(2016年6月2日現在)

■放射能は県境で止まりませんでした、調査拡充を
福島県内で実施されている甲状腺検査を縮小しようという方向性は、現段階では考えるに値しないことではないのでしょうか。それどころか、子どもだけでなく、大人の検査、さらには周辺地域での公的な甲状腺検査実施など検査体制の拡充こそが望ましいのではないでしょうか。本来であれば、原発事故による放射線影響を考慮した甲状腺以外の検査や調査もなされるべきですが、少なくとも、「県民健康調査」検討委員会をはじめとする関係機関においては、多発している甲状腺がんについての要因や事象分析を丁寧に議論・検討していただくこと、委員会だけでなく、委員会外でも検討できるよう可能な範囲内での情報公開(共有)を行うこと、早期発見や受診率向上、発症を予防するような対策検討が火急になされることを心から願っています。

以下、第25回の会議開催に先立って福島県知事などに提出された、住民からの要望です。

■NPO法人『はっぴーあいらんど☆ネットワーク』
福島県民健康調査における甲状腺検診に関する要望書(2016年12月21日)
■原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)
県民健康調査の目的に沿った調査と検査の継続と拡充を求める要望書(2016年12月21日)
■いわきの初期被曝を追求するママの会
原発事故により被害を受けた、県民の命と健康を守るため、
県民健康調査の正しいあり方を求める要望書
(2016年12月21日)

これらについて、民の声新聞(2016年12月28日配信)にて詳しい取材報告がありますのでよろしければご覧下さい。