【声明】甲状腺検査「縮小」につながる見直しに慎重な対応を求めます

私たち日本基督教団東北教区放射能問題支援対策室いずみは、2011年10月以降、福島県内で実施されている県民健康調査、とりわけ甲状腺超音波検査に関する声明を以下のとおり表明いたします。

20161221 statement
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福島民友新聞社や福島民報社などの報道によると、福島県で行われている県民健康調査、とりわけ甲状腺検査について、12月9日(金)、日本財団関係者や山下俊一長崎大学副学長が福島県庁を訪問し、〝提言書″を福島県知事に提出したとのことです。この提言書は、同財団が今年9月に福島市内で主催した国際会議でとりまとめられたとされ、将来への提言4項目が掲げられています。その1)として「健康調査と甲状腺検診プログラムは自主参加であるべきである」とされています。

提言の前提として、福島事故による一般住民の甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故事例と比較してはるかに低い量であること、福島県内で現在見つかっている174名の小児甲状腺がん、及び悪性疑いの多発状況についてはスクリーニング効果であること、などとされ、同検査により確認されている甲状腺がんについては福島第一原発事故に起因するとは考えられない、と同提言では結ばれています。その上で、震災当時0才~18才を対象とし、福島県がこれまで実施してきた甲状腺超音波検査の対象範囲を限定すべき(自主参加)としています。

私たちは原発事故との因果関係を明らかにしていくことや、具体的根拠(甲状腺超音波検査)に基づいた情報提供や継続的な観察・調査、医療の提供が大切なことだと考えていますが、それと同じくらいに、事故や汚染の影響下で長期にわたり置かれている方々の不安が受けとめられることを心から願っています。

不安が受けとめられる、というのは「検査をすると治療する必要のない良性結節や小さなしこりが見つかることがありますが、そのような場合、(知らなければ感じない)ストレスを生じさせてしまうかもしれませんが、それでも検査を受けますか?」などといったリスクコミュニケーションを行うことではありません。対処ではなく、受けとめる・受けとめられる関係性が形成されていくだと考えています。しかしながら、国をはじめとする行政機関や医療関係者、一部有識者との方々との信頼関係が根底から揺るがされつづけているのがこの原子力災害です。

福島県をはじめとして、東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染は広域に及んでいますが、健康不安に向き合い、それを乗り越えていくためには明確な根拠が必要です。明確な根拠による確認とは、不安を感じているお一人お一人の健康状態が今、どうなっているのか、該当者であるご本人さまと専門的なサポート(お医者さんの診断や検査など)がしっかりと共有・保障されることであると信じています。

過去24回開催された福島県「県民健康調査」検討委員会においても結論は出されていません。私たちは今後、原発事故との因果関係がない、として幕引きがなされ、拙速に甲状腺検査体制が「縮小」されたり、この提言に沿った形で「縮小」が検討されることを懸念しています。過去例をベースにした推論だけで結論づけず、現在起きている事象を引き続き注意深く見守っていくことを福島県及び、関係機関に希求していることをみなさまに表明いたします。

■お問い合わせ・連絡先
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