子どもの教会からのメッセージ月間より2

2023年度第2回目の子どもの教会からのメッセージ月間の2週目は、高坂乃安さん(教会員)の「いま、できること」でした。高坂さんは、審議が始まったばかりの「仙台パートナーシップ制度」からお話を展開され、「あたりまえ」とされていることをどう捉えるのかについて語っていただきました。レジュメを掲載したいと思います。

『いま、できること』  
2024・2・25
高坂 乃安   
 
おはようございます。今日こうしてメッセージをする機会をいただけたことに感謝します。2024年になった直後、能登半島地震が起こり多くの方が今なお苦しみのただなかにあります。能登半島地震を受けて思い起こされるのは、やはり東日本大震災のこと、そして、いまこうして私たちが「あたりまえ」だと思っていることが、「あたりまえ」ではないのだと感じています。

 最近、10年前のバラエティ番組を目にする機会があり、驚いたことがありました。ある男性の芸人さんがいじられている場面でしたが、「〇〇は女好き。そして男も好き」というような言葉に、笑いが起きていました。
今の私たちの感覚からすると、「それで笑いをとるなんて古くない?」とか「不適切だし不愉快」と感じる内容ですが、私たちの国は、たった10年前、2014年にはそれが面白いこととして取り上げられているありさまでした。昨年、いわゆるLGBT法が成立しましたが、法律が整備されることによって、ようやくそういった笑いのあり方にメディア内部でも疑問が入るようになったのだと思います。

 さて、先日も牧師のメッセージの中で取り上げられましたが、ここ仙台において、ようやく「パートナーシップ制度」の導入が決定し、内容の精査が始まりました。では「パートナーシップ制度」とはどのようなものでしょうか。皆さんなんとなく「同性のパートナーが結婚できる制度」もしくは「結婚まではいかないけどそれに近いような制度」というイメージはあるかもしれません。

前提として、現在日本では同性同士の結婚は法的に認められていません。そこで法的には認められない同性パートナーが県や市にパートナーであると認められる制度が、「パートナーシップ制度」です。

法律で決まっておらず、都道府県や市町村でそれぞれ制度を作っているため、制度の内容は都市間でかなりのばらつきがあります。例えば、日本で初めてパートナーシップ制度を導入した渋谷区では、「条例」として制度を作っているので、渋谷区の議会を通して内容を決めています。そのため、渋谷区内では法的な効力もある、異性間の結婚制度により近いものとして作られています。ただし、手続きは大変で、認定が降りるまでにも時間がかかるようです。

また、同じ東京の世田谷区では、条例ではなく、区の内部で制度を作っており、区議会を通さない形になっているので、法的な効力はありません。そのため、手続きは渋谷区よりも簡単なものになっているようです。どちらも一長一短ですが、同棲パートナーが住む場所によって、受けられる制度が違うことやそもそもパートナーシップ制度がない自治体もあり、不公平なのは明らかです。そもそも同性間で結婚ができる法律になっていれば、何も悩む必要がないのですが…

 ちなみに隣の台湾では2019年に同性婚が認められました。
さて、話は仙台に戻ります。パートナーシップ制度の導入を決めましたが、20箇所ある政令指定都市で一番遅いという状況です。大変恥ずかしく思いますが、それでも「宮城県内では初めてパートナーシップ制度を導入」という、恥の上塗りというべき状況です。ちなみに、あるサイトによれば、県内で1箇所もパートナーシップ制度を導入していないのは、宮城県・山形県・福島県・島根県となっており、東北が遅れをとっていることは否定できません。東北が遅れている原因はわかりませんが、東日本大地震からの復興に時間と労力を割いていたことや保守的な人が多いなどの可能性があるのかもしれません。実態としてこのような現状なのは、嘆かわしいことです。

個人的にはここまで遅きに失したのであれば、今までなかったような制度を作った方が良いのでは…と思っています。例えば、全国どこに住んでいる人でも仙台ではパートナーシップの宣誓を受け入れるというものもありでしょう。先ほど話に上がった渋谷区や世田谷区も含め、私が調べた限りでは、同性パートナーの少なくともどちらか一人が宣誓をする自治体に住んでいることが条件となっています。でも宮城県や福島県のように自分の住んでいる県のどこでもパートナーシップ制度をやっていない場合、やっている自治体に引っ越すのも大変です。仕事も変えなきゃいけないし、土地勘もないかもしれない。一方、異性間の婚姻届は、全国どこに住んでいても、どこの役所でも受け付けてくれます。私も仙台市に住民票がありましたが、東京都の武蔵野市役所に婚姻届を提出して受理してもらいました。異性では当たり前に認められるのに、同性だとダメというのはオカシイですよね?
 
話は脱線しますが、メディアなどではよくLGBTのことを「性的マイノリティ」と呼んでいます。私はこの「性的マイノリティ」という言葉が嫌いです。「マイノリティ」という言葉は「少数派」という意味で、対義語は「マジョリティ」「多数派」となります。

つまり、「マイノリティ」という言葉そのものに「多数派に対する少数派」という差別的な意味が含まれている、と感じるのです。少数派を「弱者」と言い換えても良いかもしれません。これは、日本という国においては非常に危うい、危険な言葉だと感じています。日本人はよく「協調性がある」と言われますが、裏を返せば「集団心理や同調圧力に弱い」ということになります。コロナがいい例でしょう。今となってはマスクの着用は個人の判断とされたことで、マスクをつけていなくても街中を歩けるようになりましたが、一時期はマスクをつけていなければ、鬼の首を取ったように非難されました。パンデミックの中、致し方ないところもあったのでしょうが、世界に目を向ければ、マスクの義務化が解除されるのは日本よりもだいぶ早く、個人が尊重される社会が出来上がっていると言えるかもしれません。コロナへの対応として、どちらが正しかったのかはわかりませんが、多数派の意見に弱く、流されやすいというのは日本人の特徴と言えるのでしょう。そんな国民性の中で、「マイノリティ」という言葉は、「自分たちとは違う」という意識や「多数派ではない異端者」という意識を呼び起こす、危うい言葉だと感じています。
これは冒頭のバラエティ番組の話にも通じます。たった10年前まで「多数派」の人たちが、「男性が男性を好き」ということを「おもしろおかしいこと」と感じていたからこそ、番組が成り立っていたと言えます。
 
さて、ここまでパートナーシップ制度の話を展開してきましたが、今日のテーマは「いま、できること」としました。では、仙台市のパートナーシップ制度の導入に対して、私たちが「いま、できること」とはなんでしょう。例えば、LGBT関係のデモ行進に参加してみるのも良いでしょう。または、パブリックコメントに意見を出すのも良いでしょう。これらは、わかりやすく行動に移す例です。でも、行動に移すほどの熱量を持ち続けることも大変ですよね。そんな時は、今日の話を心に留めておいてほしいのです。自分たちの考えの及ばないところで苦しんでいる人たちがいる、そして自分自身もいつか「マイノリティ」というレッテルを貼られ、苦しむことになるかもしれない。
パートナーシップ制度の話は、一つの例に過ぎません。私たちが生きているうえで「あたりまえ」であることに常に批判的に、つまり「あたりまえではない」と思ってみることが必要です。結婚という選択肢があるのは誰にも与えられたあたりまえの権利ではなく、「異性同士にのみ与えられた特権」です。能登半島地震の被災者にとって、冬に暖房をつけて、暖かい場所にいられるというのもあたりまえではありません。当然、政治家の裏金には税金がかからないというのはあたりまえではありません。
私たちがあたりまえに受けている権利や恩恵に感謝しつつ、そのあたりまえを受けられない人たちのことを常に心の片隅に置いておきたいと思います。


子どもの教会からのメッセージ月間より

2023年度第2回目の子どもの教会からのメッセージ月間についてお伝えしていきたいと思います。初回は鈴木治さん(教会員)の「共に生きるしかない(パレスチナを憂いて)」でした。 鈴木さんは、イスラエルの農業を中心とした共同体の「キブツ」で研修生をしていた経験から、昨年10月から続くイスラエルのガザへの攻撃について大変憂いていること、そして平和への願いを語ってくださいました。鈴木さんのレジュメを掲載したいと思います。

2024年1月28日(日)礼拝のご案内

日時 : 2024年1月28日(日)午前10時30分〜11時30分ごろ

メッセージ : 「声を聞き分ける」 布田秀治牧師

聖書 : ヨハネによる福音書 10章1−6節

讃美歌 : 98、507

教会に来る前にご自宅で体調チェックをお願いします。マスクの着用は個人の判断にお任せします。